ダイヤモンドは、地球上で最も固い性質を持っています。一般的には宝石のイメージですが、その硬さを利用した工業用の工具にも多く使われています。材料より硬ければ「切る・削る・磨く」という加工にはとても有利ですね。ところがダイヤモンドにも弱点や苦手な材料があります。実はダイヤモンドには「熱」に弱く「鉄」を加工するのが苦手なのです。そこで登場するのが、ダイヤモンドの次に固い性質を持ったCBNという物質です。ダイヤモンド・CBNは研削加工用の砥石に多く使われ、ダイヤモンド砥石やダイヤモンドホイールまたは超砥粒ホイールと呼ばれています。
今回はダイヤモンドとCBNとは何なのかを解説したいと思います。
1.ダイヤモンド・CBNとは
1-1.ダイヤモンドとは
ギリシャ語で「アダマス(adamas=征服しにくいもの)」が語源となっているようで、16世紀中ごろに「ダイヤモンド」と呼ばれるようになりました。あまり耳にすることはないですが「金剛石(こんごうせき)」という和名を持っています。
ダイヤモンドは純粋の炭素で構成される、宝石として最も有名な鉱物です。でも宝石だけではなく、地球上で最も硬いという性質を利用して工業用としても多く利用されています。ちなみに人工的に作られる合成ダイヤモンド(人工ダイヤモンド)はほとんどが工業用に使われています。なぜなら、合成ダイヤモンドは透明性や輝き、ダイヤモンドならではの光の屈折率などが天然ダイヤモンドに比べて大きく劣っているで、宝飾用としての利用価値がほとんど無いからです。
工業用に使われるダイヤモンドですが、天然・合成ともに弱点は「熱に弱い」ことと「鉄の加工が苦手」なことです。
1-2.CBNとは
CBNは、立方晶窒化ホウ素(りっぽうしょうちっかほうそ)「cubic Boron Nitride(キュービック ボロン ナイトライド)」の頭文字をとって表される、ホウ素と窒素からできている化合物のことです。ダイヤモンドの次に硬くて、ダイヤモンドよりずっと熱に強い性質を持っています。さらにダイヤモンドの弱点である「鉄の加工」にも強いので、ダイヤモンドを使えない鉄の加工や高温になる加工に使われることが多いです。
2.ダイヤモンド・CBNの特性
下のグラフはダイヤモンド・CBNと一般砥石用砥粒の特性比較です。ダイヤモンド・CBNは熱伝導率と硬度が高いことが分かります。熱伝導率が高いと加工物の温度上昇を押さえることができるので、品質の良い加工結果となります。硬度が高い(硬い)と切れ味が良くなるので、精度や寿命が良くなります。
このようにダイヤモンド・CBNを使うと、とても優れた砥石を作ることができます。一方デメリットは、一般的な砥石に比べてかなり高額になるということです。
※ヌープ硬度 (ヌープこうど): 材料の硬さを表す指標で、押込み硬さの一つです
3.ダイヤモンド・CBN以外の砥粒
研削加工にはダイヤモンド・CBN以外の砥粒を使った砥石もたくさん使われています。これらは一般砥石と呼ばれていて、用途や材料によって使い分けられます。下の表は一般砥石に使われている代表的な一般砥粒をまとめたものです。
4.まとめ
宝石のイメージが強いダイヤモンドが、実はいろんな材料を加工する工具に最適だということと、地球で2番目に硬い物質がCBNというあまり聞いたことの無いものだったということを少しは知っていただけたと思います。
次回はダイヤモンド・CBNを使った研削加工用ホイールについて解説したいと思っています。興味のある方もそうでない方も是非読んでくださいね!