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SAWフィルターとダイヤモンド砥石の切っても切れない関係

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ダイヤモンド工具・CBN工具/ 2018/06/19

日常生活でスマートフォンや携帯電話で会話することは当たり前の時代、会話ができて当然で何の疑問も感じないと思います。ではどうして雑音やノイズもなく相手の声が聞こえるのでしょうか?実はスマートフォンや携帯電話には「SAWフィルター」という部品が搭載されていて、これが雑音やノイズをカットしてクリアな音を皆さんに届けてくれるのです。
今回は聞きなれない部品「SAWフィルター」とは何なのか・・・そしてその部品を作るのに欠かせないダイヤモンド砥石についてのお話です。

1.SAWフィルターとは

聞いたこと無いな・・・っていう人のほうが多いと思うこの「SAWフィルター」はsurface acoustic wave filterを略したもので、日本語では弾性表面波フィルターまたは表面弾性波フィルターと呼ばれます。日本語にしたところで聞いたことが無いってことには変わりないですよね。
SAWフィルターは、携帯電話が普及し始めた1990年頃から開発が活発化し、今後益々需要が増え続けることが予想されています。ちなみに無線LANやWifiもSAWフィルターのおかげで安定した性能を発揮しています。

1-1.SAWフィルターの特長

SAW(surface acoustic wave 弾性表面波)というのは弾性体表面を伝搬する波のことで、この表面波の性質を応用したフィルターがSAWフィルター(surface acoustic wave filter弾性表面波フィルター)です。小型・薄化が可能で、なおかつ高性能で安価という、まさにスマートフォンや携帯電話にはもってこいの特長を持っています。

弾性表面波のイメージ図

■弾性表面波のイメージ図

1-2.SAWフィルターの役割

スマートフォンや携帯電話などの移動体通信に使用される周波数帯100MHz~3GHzを中心とした信号のフィルタリング用途に使用されます。簡単に言うと、必要な周波数だけ通して、余計な周波数を取り除くことがSAWフィルターの役割で、スマートフォン・携帯電話には欠かせない部品となっています。それどころか、スマートフォンのLTE、多バンド化、CA(キャリアアグリゲーション)化など、様々な周波数帯に対応するため、1台に搭載されるSAWフィルターの数は増加し続けています。ハイエンドモデルになると、スマートフォン1台あたり40個以上のSAWフィルターが搭載されています。
このSAWフィルターの基板に使われているのがLTウェーハやLNウェーハで、このウェーハを加工するのにダイヤモンド砥石が使われています。

SAWフィルターのイメージ図

■SAWフィルターのイメージ図

2.LT、LNとは

LTインゴットとウェーハ 画像提供:住友金属鉱山株式会社

■LTインゴットとウェーハ 画像提供:住友金属鉱山株式会社

SAWフィルターの基板に使われているLT、LNとは何者なのか?やはり聞きなれないアルファベットですね。LTは化学式がLiTaO3で名称はタンタル酸リチウム、リチウムタンタレイトと呼ばれる場合もあります。LNは化学式がLiNbO3で名称はニオブ酸リチウムです。どちらも酸化物単結晶で、インゴットで製造され切断されてウェーハになります。
他の半導体基板に多く使われているSi(シリコン)やSiC(シリコンカーバイト)などは非常に硬質な材料です。一方でLT、LNは弾性表面波が伝搬するので、伸縮・振動するというのが従来の半導体基板材料との大きな違いです。

3.ダイヤモンド砥石を使ったLT、LNウェーハの加工

LT、LNウェーハの表面加工には主に縦型平面研削盤という機械が使われ、実際にウェーハを削っているのがダイヤモンド砥石です。このLT、LNウェーハの研削加工はとても難しく、単結晶特有のヘキ開割れによって、少しの衝撃で全体が割れてしまいます。また結晶方位によって熱膨張係数が著しく異なるので、熱変化にさらされると内部に応力歪みが生じて、やはり一瞬のうちに破損してしまうことがあります。つまり簡単に言うと、とても脆弱でちょっとした衝撃や熱ですぐに割れてしまうのが弱点です。
ということで、この加工しにくいウェーハを研削するには「低ダメージ」「低負荷」「低熱変化」加工が必要となります。これらの条件を満たしたダイヤモンド砥石が、株式会社アライドマテリアルが販売している「ナノメイトプレミアム」です。LT、LNウェーハ研削が可能になるように開発し、多くの企業で採用されています。専用設計されたボンドは「低ダメージ」「低負荷」加工を実現しました。さらに新開発された「Jetstorm(ジェットストーム)」というボディ形状によって研削水を加工点に均一に供給できるので「低熱変化」加工も可能となりました。もちろん能率や寿命もぐっと向上します。

新開発ボディでのLYウェーハ加工イメージ

■新開発ボディでのLTウェーハ加工イメージ

LT、LNウェーハ加工用ダイヤモンドホイール「ナノメイトプレミアム」

■LT、LNウェーハ加工用ダイヤモンドホイール「ナノメイトプレミアム」

4.まとめ

私たちの最も身近にあるスマートフォンや携帯電話から当たり前に雑音もなくクリアに聞こえている音、実は「SAWフィルター」という部品が良い仕事をしているからなのです!というお話でした。そして、その部品を作るのにダイヤモンド砥石が使われていることを知っていただけましたか?
ダイヤモンドを使った工具や砥石は、様々な分野で地味に活躍しています。次はまた違う活躍の場面を紹介しますのでお楽しみに~。

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