モバイルネットワークの高速大容量化に貢献
通信の高速大容量化やデバイスの小型化により、無線通信用半導体の発熱量が増加しています。世界的な普及のスタートラインに立った5Gの基地局(アンテナ)には、化合物半導体のGaN(窒化ガリウム)素子が多数搭載されています。これまでの主力であったSi(シリコン)半導体に比べて小型高性能ですが、発熱密度(単位体積あたりの発熱量)が高いため、通信網の信頼性を確保するためには効率的な放熱対策が不可欠です。アライドマテリアルはSi半導体はもちろんのこと、GaN半導体に適した高熱伝導かつ低熱膨張を誇る放熱基板を取り揃えており、次世代の携帯通信ネットワーク構築に貢献してまいります。
用 途 | 無線通信・携帯基地局・航空機・船舶・人工衛星 等 |
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小型低出力で、主に都市部の携帯電話ネットワークを高密度にカバーする基地局用デバイスに用いられるパッケージです。半導体材料の熱膨張係数に近いCu-Mo、CPCが適しています。
高出力で、広い範囲の携帯電話ネットワークをカバーする基地局用デバイスに用いられるパッケージです。セラミックス筐体の熱膨張係数に近いCu-Mo、CPCやCu-Wが適しています。
航空・宇宙向けなど、高出力で信頼性が求められる用途に用いられます。コバールなど金属筐体と熱膨張係数が近いCu-WやCu-Moに加え、ハイエンド領域ではAg-Diamondが使用されています。
光通信を司る基幹部品であるレーザーモジュールは、ダイオード・サブマウント・キャリアを収めた複雑形状のパッケージとなっています。こうしたパッケージの筐体材料には、放熱基板のなかでも複雑かつ微細加工が可能なCu-Wが適しています。
レーザーダイオード直下には下部部材との熱膨張率の差を緩和するためサブマウントが配され、熱伝導率に優れたAlNやCu-Wのほか、高出力レーザーにはCu-Diamondが用いられます。また、チップキャリアには微細加工が可能なCu-Wが適しています。
電気自動車・ハイブリッド車の安全走行に貢献
脱炭素社会実現を視野に、グローバルでEVやHV(PHV,PHEV)の市場拡大が見込まれています。これらバッテリーやモーターを搭載する電動車には、電力制御や電力変換用にパワーデバイスが不可欠です。なかでもパワートレインの高出力化に対応したインバーターやコンバーターには、SiC(炭化ケイ素、シリコンカーバイド)など高効率なパワー半導体材料や両面から冷却するモジュールなど、放熱がキーとなるデバイスが採用されつつあります。また、HVの内燃機関でも、燃料噴射制御装置やラジエーターなど、安全走行に不可欠な部品にも放熱基板が必要です。アライドマテリアルの高熱伝導放熱基板は、安全安心な電動自動車の開発に貢献しています。
用 途 | ハイブリッド車パワーコントロールユニットPCU・ 電気自動車インバータ・ECU 等 |
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モーター駆動用電流を制御するIGBTモジュールの放熱対策に、CuやAlなどの金属板や冷却器を組み込む方式があります。Cu-MoやMoは半導体素子と金属板との間に接合され、放熱を促進しつつ、熱応力緩衝材としての役割を果たします。
LED照明の高輝度化に貢献
LED(Light Emitting Diode)は従来の光源に比べ長寿命かつ省エネルギーが特長です。従来は家庭用の照明にとどまっていましたが、高輝度化の進展により、自動車のヘッドライトや屋外照明、プロジェクターなどにも用途拡大が加速しています。将来的には、LEDの波長を制御した飲料水の殺菌や屋内野菜栽培、医療などへの応用も期待されています。一方、発光源であるLEDチップは熱に弱い特性があり、高温になりやすい高輝度LEDデバイスには放熱対策が不可欠です。アライドマテリアルの放熱基板は熱伝導率に優れており、独自の加工技術で複雑形状の放熱基板にも対応しています。
用 途 | プロジェクタ・ヘッドライト・屋外照明 等 |
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高輝度化が進むLEDの放熱対策として、大型薄板ウエハーを製造できるMo/Cu-W/Cu-Moの支持基板が適しています。サファイアウェーハ上に発光層を形成後、放熱基板を接合しサファイア母材を剥離し、ダイシングを経て小型薄型LEDデバイスが完成します。
放熱対策と接合応力緩和のために、LEDチップの直下にサブマウントが配置する場合があります。サブマウントにはAlNやCu-W、Cu-Diamond、CVDダイヤモンドが使用され、さらにその下キャリアにはCu-Wが使われています。
金属加工から医療まで、半導体レーザーの用途拡大に貢献
金属の穴あけや切断、溶接、焼入れなどにレーザー加工機が普及しています。また、手術用レーザーメスやがん治療、美容整形など医療にもレーザーのフィールドが広がりつつあります。半導体レーザー(レーザーダイオード)には、GaAs(ガリウムひ素)やGaN(窒化ガリウム)などの化合物半導体が用いられますが、これら半導体素子がレーザー発振時に熱を発するため、熱伝導率に優れた放熱基板で放熱する必要があります。アライドマテリアルは半導体材料との熱膨張マッチングに優れた高熱伝導放熱基板を取り揃えています。
用 途 | 溶接・切断・美容・医療・スタック(積層型) 等 |
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高出力でレーザー光を発するバーレーザー半導体の性能を維持するには放熱対策が重要です。出射部直下に配されるサブマウントには、レーザー出射を妨げないよう、シャープエッジ加工が可能で熱伝導性に優れるCu-Wや銅ダイヤモンドが適しています。
高出力ファイバーレーザー加工機には、シングルエミッタタイプのレーザーダイオードが複数組み込まれています。出射部直下に配されるサブマウントには熱膨張係数のマッチングと高熱伝導の両立が求められ、AlNやCu-Wが用いられています。
洋上風力発電の拡大に貢献
石炭や原子力を利用した発電から、再生可能エネルギーへのシフトが世界的に進んでいます。その一つである風力発電には、安定した風量確保と騒音対策の観点で、立地場所が限られるという課題がありました。そこで注目されているのが海洋上への展開です。周囲に遮るものがないので、発電に適した風量を安定的に得られ、多数の発電機を集中的に配備することも可能です。海上から陸地への長距離送電には、送電時のロスが少ない直流が理想とされていますが、交流との変電ロスが課題となります。このためパワーデバイスには高い変換効率に加えて、沖合いゆえに小型化やメンテナンスフリーが要求されます。現代のインフラを支える半導体素子が発する熱を長期間安定的に放熱するためには、信頼性の高いアライドマテリアルの放熱基板が最適です。
用 途 | 洋上風力発電 等 |
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パワーモジュールにおいて、IGBT素子とパッケージ材の熱膨張率差を緩和するため、Moのチップキャリアを熱緩衝板として挟む対策が有効です。また、パッケージにCu-Mo基板を接合することで効率よく放熱することができます。
高速鉄道網の拡大に貢献
新幹線に代表される高速鉄道は日本とヨーロッパが世界をリードしてきましたが、近年は中国などアジアでも路線網が急速に拡大しています。高速で走行する電車は、パンタグラフから集電した高圧電流を、主変換装置(コンバーター、インバーター)でモーター駆動に適した電流に変換しており、この制御にIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)が組み込まれています。高速で走るゆえに大容量と小型軽量の両立が求められ、パワーデバイスの発熱が課題となります。アライドマテリアルは、鉄道車両用IGBTモジュールに適した放熱特性と形状安定性を兼ね備えたモリブデン系放熱基板を用意しています。
用 途 | インバータ 等 |
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高速鉄道用モーターを制御するIGBTに代表されるパワーモジュールは、チップの小型化が進み、パワー密度の上昇に伴う放熱対策が課題となっています。MAGSICは従来材Al-SiCより熱伝導率が高く、長期高温動作による熱変形が少ない特長を有します。
モーター駆動用電流を制御するIGBTモジュールの放熱対策に、CuやAlなどの金属板や冷却器を組み込む方式があります。Cu-MoやAg-Diamondは半導体素子と金属板との間に接合され、放熱を促進しつつ、熱応力緩衝材としての役割を果たします。
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材質 | 名称 | 組成 | 特徴 | 平均線膨張係数 R.T.~800℃[ppm/K] |
熱伝導率 R.T.[W/(m・K)] |
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Cu-W | W-6 | 94W-6Cu | 熱膨張率を低く抑えたCu-Wであり、GaAsやGaNに熱膨張率が近く、熱膨張のミスマッチを制御します。 | 6.4 | 141 |
W-10 | 89W-11Cu | アルミナと熱膨張率の整合をとっており、アルミナを用いたセラミックスパッケージに広く用いられています。 | 7.9 | 174 | |
W-15 | 85W-15Cu | ベリリアセラミックと熱膨張率の整合をとっており、ベリリアを用いたセラミックスパッケージに広く用いられています。また、熱膨張率がアルミナとコバールの中間値のためアルミナとコバールの両方用いたパッケージにも広く用いられています。 | 8.6 | 184 | |
W-20 | 80W-20Cu | コバールと熱膨張率の整合をとっており、コバールを用いたメタルパッケージに広く用いられています。 | 9.8 | 200 | |
W-10N | 89W-11Cu | アルミナと熱膨張率の整合をとっており、アルミナを用いたセラミックパッケージに広く用いられています。W-10Nは専用金型の作製により、外周加工レスCu-W(ニアネットCu-W)を提供できます。 | 7.9 | 200 | |
W-10T | 89W-11Cu | 熱膨張率はW-10と同じですが、特別な製法により熱伝導率を向上させています。また、反りを小さく抑えることが可能なため高出力レーザー用のサブマウント用途に広く使用されています。 | 7.9 | 205 |
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材質 | 名称 | 組成 | 特徴 | 平均線膨張係数 R.T.~800℃[ppm/K] |
熱伝導率 R.T.[W/(m・K)] |
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Cu-Mo | CM-15 | 85Mo-15Cu | 熱膨張率を低く抑えたCu-Moであり、GaAsやGaNに熱膨張率が近く、熱膨張のミスマッチを制御します。 | 7.6 | 148 |
PCM30 | 70Mo-30Cu | 熱膨張を低く抑えたCu-Moですが、圧延やプレス加工などコストに優れた製法が適用可能です。 | 7.5 | 195 | |
PCM35 | 65Mo-35Cu | アルミナと熱膨張率の整合をとっており、アルミナを用いたセラミックパッケージに広く用いられています。 | 7.8 | 210 | |
PCM40 | 60Mo-40Cu | 熱膨張率がデバイス(Si、GaAs、GaN、SiC)と銅やアルミの中間値のため、銅板やアルミ板上にデバイスを実装する場合の応力緩衝材として広く用いられています。 | 8.2 | 220 | |
RCM60 | 40Mo-60Cu | 熱膨張率がデバイス(Si、GaAs、GaN、SiC)と銅やアルミの中間値のため、銅板やアルミ板上にデバイスを実装する場合の応力緩衝材として広く用いられています。 | 10.5 | 275 |
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材質 | 名称 | 組成 | 特徴 | 平均線膨張係数 R.T.~120℃[ppm/K] |
熱伝導率 R.T.[W/(m・K)] |
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Mg-SiC | Mg-SiC | 18Mg-SiC | 軽量のため大型基板での使用に適しています。 さらに反りが安定しており、高熱伝導とあわせ放熱性に優れています。 |
7.0 | 230 |
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材質 | 名称 | 組成 | 特徴 | 平均線膨張係数 R.T.~800℃[ppm/K] |
熱伝導率 R.T.[W/(m・K)] |
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Mo | Mo | Mo | 半導体(Si、GaN、SiC)に熱膨張が近く、半導体への熱ストレスを低減するために広く用いられます。 | 5.7 | 142 |
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材質 | 名称 | 特徴 | 平均線膨張係数 R.T.~400℃[ppm/K] |
熱伝導率 R.T.[W/(m・K)] |
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Cu-Diamond | DC60 | 熱膨張率を化合物半導体(GaAs,GaN)に合わせた高熱伝導ヒートシンクです。 | 6.0 | 550 |
DC70 | 6.5 | 500 |
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材質 | 名称・組成 | 特徴 | 平均線膨張係数 R.T.~400℃[ppm/K] |
熱伝導率 R.T.[W/(m・K)] |
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AlN | AlN(200W) | 絶縁やパターン回路が必要な場合に有用です | 4.5 | >200 |
AlN(170W) | 4.5 | >170 |
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材質 | 名称 | 組成 | 特徴 | 平均線膨張係数 R.T.~800℃[ppm/K] |
熱伝導率 R.T.[W/(m・K)] |
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CPC | CPC141 | Cu/Cu-Mo/Cu | アルミナと熱膨張率の整合をとっており、アルミナを用いたセラミックパッケージに広く用いられています。 | 7.6 | 200 |
CPC232 | Cu:Cu-Mo:Cu=2:3:2(厚み)で積層し、熱膨張率と熱伝導率を調整した材料です。 | 8.4 | 235 | ||
CPC111 | Cu:Cu-Mo:Cu=1:1:1(厚み)で積層し、熱膨張率と熱伝導率を調整した材料です。 | 9.8 | 260 | ||
CPC212 | Cu:Cu-Mo:Cu=2:1:2(厚み)で積層し、熱伝導率を300W/(m・K)に高めた材料です。高出力デバイス(GaN、SiC)の性能発揮のため広く用いられています。 | 12.1 | 300 | ||
CPC-300 | 熱伝導率が300W/(m・K)と非常に高く、高出力デバイス(GaN、SiC)の性能発揮のため広く用いられています。0.5mmの薄板対応も可能です。 | 12.1 | 300 |
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材質 | 名称 | 組成 | 特徴 | 平均線膨張係数 R.T.~400℃[ppm/K] |
熱伝導率 R.T.[W/(m・K)] |
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Al-SiC | β8 | 70SiC-30Al | 専用金型により加工を必要とせず、安価に製造できます。 パッケージの種類により熱膨張率が可変です。 |
8.0 | 140 |
β9 | 65SiC-35Al | 9.0 | 130 | ||
β14 | 45SiC-55Al | 14.0 | 160 |
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材質 | 名称 | 特徴 | 平均線膨張係数 R.T.~800℃[ppm/K] |
熱伝導率 R.T.[W/(m・K)] |
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Ag-Diamond | AD90 | Cu-Diamondよりも高い熱伝導率(600W/(m・K))を有しており、50×50mm2の大面積の用途へも適用可能です。 | 10.5 | 600 |
ヒートシンクとなる AIN、Cu-W、Cu-Diamond はシャープエッジ(ピン角)に加工できるため光路を妨げず、エッジ先端部で発光する LD 部の放熱性を高めます。また、はんだ流れを制御する技術により、安定したレーザ性能を実現します。
下記リンクから技術資料をダウンロードできます
※ダウンロードには会員登録が必要ですCu-Diamond は、化合物半導体に近い熱膨張係数、かつ銅以上の熱伝導率(>500 W/m・K)を有しています。Cu-W は、銅の高熱伝導特性とタングステンの低熱膨張特性を兼ね備え、周辺材料に合わせて線膨張係数を調整可能です。
Moは半導体素子(Si、GaN、SiC)に近い熱膨張率を有し、半導体素子への熱ストレスを低減することができます。Cu-WとCu-Moは、高熱伝導金属の銅と低熱膨張金属のタングステン、あるいはモリブデンとの複合材料で、周辺材料に合わせて線膨張係数を調整できます。
熱伝導率が金属元素で最高の銀と、地上の物質で最高のダイヤモンド。独自技術で複合化し、600 W/(m・K)以上の熱伝導率を有す放熱基板です。航空・宇宙向けの高出力デバイスに最適です。
Cu-Moの上下を純銅で挟んだ3層構造の放熱基板です。Cu-Mo材の組成とCuとの積層比率を調整することで、熱伝導率と線膨張係数が可変となります。さらに、表面がCuで初期の熱放散に優れ、量産が可能です。
標準は熱膨張 7.0ppm、熱伝導 230W/(m・K) の軽量、低熱膨張、高熱伝導放熱基板です。MgとSiCの組成比率を変え、熱膨張のカスタマイズも可能です。反り付け形状のばらつきが少なく、ヒートサイクル試験後も反り形状が安定して保持されます。